
清川「肱川」を借景とし、「不老庵」は肱川の中に居るが如き風情を作り出しています。館の中心となる「臥竜院」は、茅葺の田舎家風の外観をしていますが、内部は時の移り変わりの光と風を楽しむ趣向が施されています。建築と自然の融合をこよなく愛した寅次郎の感性が余すところなく表現されています。大工は大洲と京都の2人の大工を使い、地域性と伝統技術の融合を図っています。ディテールには京都の千家十職の手が加わり、木目の細かい細工を施してあります。詳細に学ぶと日本建築の奥深さを再発見する一見の価値ある建物と庭園です
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上芳我邸

東京都武蔵小金井に「江戸東京たてもの園」があります。この中にひっそりと建築家前川國男邸が残っています。昭和17年に竣工したこの建物は、戦争中の物資の無い中で、100㎡未満という制限の中で建てられました。
平面計画は、吹抜けの居間を中心にそれを挟むように、寝室、書斎をおく極めて簡素な構成です。外観は、竪板張りに明かり障子、そしてガラス格子といった対照的な要素によって特徴づけられています。屋根は大屋根の5寸勾配で、中央の棟部分が大きな吹抜けとなっています。
居間の上部はロフト風の2階として、ダイナミックな空間構成が見事です。南向きの居間は、夏は直射日光を遮り、冬は太陽光をダイレクトゲインしていて、切妻でこうした処理は珍しいものです。
机や椅子、照明器具も前川氏のデザインによるもので、静かな中にも、センス溢れる意匠性を感じます。雨戸が、何故か外部ガラス建具の内側にはまっています。
敷地は、建設当時と同じ大きさに配置され、南庭と北庭をほぼ同等の大きさを持たせています。これは、北庭の景色も美しいという美学が入っていると思われます。空襲で前川事務所が焼けた時には、ここを製図場として使っていたそうです。
前川國男邸→
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四季の季節毎の花木が長谷寺は見事です。春→櫻、夏→牡丹、秋→紅葉、冬→雪景色と四季を楽しめるように寺全体が演出されています。見せるお寺として訪れる人を楽しませてくれます。しかし、長谷寺の名物はやはり長い「登廊」です。長いまっすぐなこの登廊を登ると、人は未来や彼岸に辿り着きたいという気分にさせてくれます。登った先に何があるか?ではなく、登っているプロセスに意味があるのです。これは不思議な気持ちです。一歩一歩足を踏みしめて登る行為は、京都の愛宕さんに登る行為ににています。登る行為に意味を見出すことが出来る仕掛けなのです。屋根付きの登廊は、山に登るとは異なる寺院と言う宗教色が付加されています。「登廊」は、寺院が人の心に働きかける空間であることを感じることの出来る装置なのです。
空間視覚心理学→Cucania,inc.

永源寺は、南北朝時代の興安元年(1361)に、時の近江守護職、佐々木六角氏頼公が、入唐求法の高僧、寂室元光禅師(正燈国師)に帰依し、領内の土地を寄進して伽藍を創建したことが始まりです。滋賀県東近江市の愛知川上流にある臨済宗永源寺派の本山です。ここの見所は本堂方丈の大きな茅葺屋根です。この大きさは何故か親しみのある大きさ、安心感、おおらかさで人の心を安らげてくれます。この本堂に入って縁側を眺めると、体内にいるような安堵感に包まれます。永源寺が山深い川沿いにあるためんでしょうか、空気が澄んでいるからでしょうか。人を安心感で包み込む本堂に来て、あの長いアプローチも山門の太い柱もモミジの回廊もその一点に注がれているようです。
参考:日本の空間美学→Cucania,inc.

詩仙堂は庭と建物の関係を考察するのに最も適している歴史建築物です。南面3室を取り、庭の中に居るかの如き室内です。庇が深いため庇の下端が風景を切り取り奥深い庭として心の広がりを表しているかのようです。
丈山は、家康に仕え武勲をたてただけでなく、平素から読書に親しみとくに詩を好みました。三十三歳で隠退後は藤原惺窩について朱子学をおさめ、駿河清見寺の説心和尚に禅を学び、五十九歳で詩仙堂を造営し、没するまでの三十余年を、清貧の中に聖賢の教えを自分の勤めとし、詩や書や作庭に寝食を忘れてこれを楽しんだ風雅な文化人でもありました。
詩仙堂URL
日本の空間美学→Cucania,inc.

京町家宿「かがりや」を視察しました。京都への憧れは、この宿に泊まって満たされる感がります。本間(ほんけん=京間サイズ)では無いのですが、この狭い空間の中に、土間あり、吹抜けあり、床あり、坪庭ありとふんだんに押し込められています。生活する、四季を楽しむ、機能性を持つ、客人を招く設えありと総合的にワンセット揃っているミニマム住宅として見たら、高度に洗練された仕組みがバランス良く揃っています。最小限の京都の住まいの味わいを学ぶには最適な宿です。広さの間隔が現代生活とは大分スケール感が異なりsmallサイズです。
京町家の宿 かがりや